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仮想通貨

【2023年6月】暗号資産に関する法改正施行決定!トラベルルールやステイブルコインとは?

2023年5月後半から6月初めにかけて、暗号資産(仮想通貨)にまつわる法改正と新たなルールが設けられました。今回ご紹介するのは、6月1日から施行された「犯罪収益の移転防止に関する法律(略称:犯収法)」と「改正資金決済法」についてです。法改正が成されたことで新たに設けられた「トラベルルール」と「ステーブルコイン」についても触れていきます。この記事が、皆様の課題解決や疑問解消の一助となれば幸いです。

【2023年6月】暗号資産に関する法改正施行決定!トラベルルールやステイブルコインとは?

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2023年5月後半から6月初めにかけて、暗号資産(仮想通貨)にまつわる法改正と新たな

ルールが設けられ、業界では大きな話題を集めています。

今回ご紹介するのは、ともに2023年6月1日から施行された「犯罪収益の移転防止に関する法律(略称:犯収法)」「安定的かつ効率的な資金決済制度の構築を図るための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律(通称:改正資金決済法)」についてです。

前者は、暗号資産(仮想通貨)に関する規制強化、後者は、キャッシュレス時代に対応した金融サービスの利用者の利便性の向上及び保護を図ることを目的としています。

重ねて、法改正が成されたことで新たに設けられた、マネーロンダリングなどに対する犯罪対策の強化のための「トラベルルール」と、正式な電子決済手段として発行可能になった「ステーブルコイン」についてもご紹介していきます。

この記事が、皆様の課題解決や疑問解消の一助となれば幸いです。

「犯罪収益の移転防止に関する法律(犯収法)」の法改正とトラベルルールについて

日本政府は、暗号資産(仮想通貨)に関する規制を強化することを目的に、「犯罪収益の移転防止に関する法律(略称:犯収法)の改正を令和5年5月23日に閣議決定しました。

5月26日公布、6月1日の施行が決定した本政令に伴い、日本における暗号資産交換業者(金融庁に正式登録された暗号資産を扱う業者)は、「トラベルルール」と呼ばれる対応を行う必要があります。

トラベルルールとは、金融活動作業部会(FATF=Financial Action Task Forceが提唱する規則のことで、マネーロンダリングなどに対する犯罪対策を強化することが狙いです。

「FATF」とは

「FATF」とは、マネーロンダリング対策(AML)やテロ資金供与対策(CFT)などを監督する国際組織のこと。 提示するルールや勧告自体に法的拘束力はありませんが、加盟国に対して審査を実施し、マネーロンダリングやテロ資金供与対策における非協力国リストを公開することから、大きな影響力を持っています。 加盟国は、G7を含む37カ国・地域と2地域機関。「FATF勧告」は、世界200以上の国・地域に適用されます。

そもそもトラベルルールとは

トラベルルールとは、先に記述した通り、FATFが提唱した、犯罪者やテロリストが決済手段として仮想通貨を悪用することを防止する目的で提案された規則のことです。

「利用者からの依頼を受けて仮想通貨の送金を行う交換業者は、送金依頼者と受取人の詳細情報を、受取人側の交換業者に通知しなければならない」という内容で、2023年6月1日から適用開始されました。

詳細情報とは、下記の内容を指します。

  • 利用者本人のアルファベット表記の氏名または法人名
  • 送金先種別(個人/法人)
  • 送金先(受取人)のアルファベット表記氏名/法人名
  • 送金先(受取人)の郵便番号
  • 送金先(受取人)の相手国
  • 送金先(受取人)の地域
  • 送金目的

これらの記入を行うことで、大きく下記の2点を目的としています。

  • テロリストやその他犯罪者が犯罪のため電子的な資金の移転システムを使用することを防ぐ
  • 不正利用があった場合に、犯罪収益の移動を追跡しやすくする

また、規則に違反した業者には、行政指導や是正命令を出し、従わなければ刑事罰が科される決まりです。

「犯罪収益の移転防止に関する法律(犯収法)」改正の理由

今回、暗号資産に関する規則を強化した理由は、2つ挙げられます。

1点目は、2021年8月、金融活動作業部会(以下FATF)が発表した「第4次対日相互審査報告書」で、仮想通貨をはじめとした包括的な審査により、日本を「実質的な不合格」と判断したためです。

FATFは、マネーロンダリング対策(AML)やテロ資金供与対策(CFT)について、仮想通貨を含めたリスクの高い分野に対処しようとしていると評価した一方で、次のように指摘されました。

「日本の政策と戦略は、AMLやCFTの活動に特化したものではなく、全体的にまだ改善の余地がある」とあるように、暗号資産(仮想通貨)の更なる規制強化の必要性がわかります。

2点目は、2023年5月19日より、広島でG7サミットが開催されたことに起因します。

FATFのラジャ・クマール議長は、サミット開催直前の18日に、「仮想通貨の無法地帯に終止符を」というタイトルで、次のように発表したのです。

トラベルルールをはじめとする、FATFが提唱する国際基準を「仮想通貨セクター(セクター:主に株式相場や株式市場を分析する際、便宜上区分するグループ)で遵守徹底させるべきである」

重ねて、クマール議長は、FATFの勧告が多くの地域で見られないとして、「G7諸国は模範を示し、違法な金融取引が安全に行われるような場所が存在しないように仮想通貨セクターを規制すべき」と主張しました。

その発言の背景として、多くのケースで身代金が仮想通貨により支払われている「ランサムウェア攻撃」が近年増加していること。そして、仮想通貨が制裁回避やテロ資金調達などにも使用されていることが原因であると続けています。

「ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)」とは

「ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)」とは、ハッキングを仕掛け、元の状態に戻すことと引き換えに、金銭を要求するマルウェア(マルウェア:デバイス・サービス・ネットワークに危害や悪用することを目的としたソフトウェアの総称)のことです。ハッカーは、他人の重要文書や写真ファイルを勝手に暗号化したり、PCをロックし使用を制限した上で、金銭を要求してくるケースが多く見られます。

こうした犯罪撤廃のため、G7諸国は「模範を示し、違法な金融取引が安全に行われるような場所が存在しないように仮想通貨セクターを規制すべき」と述べました。

また、「今後、トラベルルールに基づき、モニタリング、規制および監視を行うことは、仮想通貨の活動や市場がもたらす、金融安定と健全性のリスクに対処し、規制の裁定を避けるために極めて重要である」とあるように、暗号資産がテロ活動や制裁回避に使用されないよう、世界規模で監視する体制を整えていく必要性を喚起したためです。

今回、トラベルルールが日本の仮想通貨取引所へどう影響するのか

以前より、段階的にトラベルルールへの対応を進めてきた日本の仮想通貨取引所。今回の法改正により、多くの関心が集まっています。

その理由は、国内の取引所同士であっても、日本の仮想通貨取引所で採用するシステムが異なることで、直接送金ができなくなるためです。

トラベルルールに対応するための情報通知システムが異なることで、現時点では、互換性がありません。

それにより、金融庁から正式な許可を受けている国内の暗号資産交換業者間でも、暗号資産の送金に対応できないのです。

現在、世界各国の仮想通貨取引所において、トラベルルールに準拠するよう設計されたシステムは、下記の2つが選定されています。

  1. 米国を拠点とする仮想資産サービスプロバイダーのグループが設立した「TRUST(Travel Rule Universal Solution Technology)
  2. 台湾のCoolBitX社(クールビットエックス)が運営する「Sygna Allianc(ジグナアライアンス)

しかし、先に記述した通り、「TRUST」と「Sygna Alliance」間において、相互の送受信ができなくなるのです。

世界各国の情勢として、「Coinbase(コインベース)」や「Circle(サークル)」をはじめとする主要米国企業は「TRUST」を採用している一方で、アジア圏では「Sygna Alliance」を採用している傾向にあります。

TRUSTのメンバー

Sygna Allianceのメンバー

ここで、日本における暗号資産交換業者がどちらのシステムを採用しているかご紹介します。

日本の二大暗号資産交換業者と呼ばれるbitFlyer(ビットフライヤー)Coincheck(コインチェック)で導入するシステムは「TRUST」です。

一方、GMOコインbitbank(ビットバンク)DMMコインBTCBOX楽天ウォレットZaif(ザイフ)など、他の国内企業では「Sygna Alliance」が用いられています。

今後、暗号資産(仮想通貨)を利用する場合、自身が利用している暗号資産交換業者がどのシステムを導入しているのかきちんと確認し、送金可能な取引所やプライベートウォレットを選択することが大切です。

「プライベートウォレット」とは

「プライベートウォレット」とは、言い換えるならば自身の銀行口座のこと。暗号資産の取引所では、業者が秘密鍵(=暗証番号)を管理する一方で、プライベートウォレットは自分で秘密鍵を管理します。暗証番号を他人に知られてしまうと、悪用されてしまうように、秘密鍵は大切に管理しなければなりません。取引所の倒産やハッキングなどのリスクを防ぐため、プライベートウォレットを作成される方が多い印象です。

ただし、この制約は「トラベルルール」に基づいた情報通知が義務づけられた21の国や地域に限定されます。

つまり、下記の21カ国以外に拠点を置く暗号資産交換業者との間では、引き続き暗号資産の送付や預け入れが可能です。

通知対象国

日本カナダスイスバハマ香港ルクセンブルク
アメリカ
合衆国
ケイマン諸島セルビアバミューダ
諸島
マレーシアアルバニア
シブラルタル大韓民国フィリピンモーリシャスイスラエルシンガポール
ドイツベネエズラリヒテンシュタイン

つまり、下記に添付する図のような仕組みです。

TRUSTの場合

国・選別TRUST対応:
暗号資産交換業者
対象暗号資産・
暗号資産送付有無
通知対象国TRUST対応:
暗号資産交換業者
TRUST対応の暗号資産預入・
送付可能
TRUST非対応:
暗号資産交換業者
預入・送付不可
非通知対象国                        -      取り扱う全ての暗号資産預入・
送付可能
プライベートウォレット       –取り扱う全ての暗号資産預入・
送付可能

Sygna Allianceの場合

国・選別Sygna Alliance対応:
暗号資産交換業者
対象暗号資産・
暗号資産送付有無
通知対象国Sygna Alliance対応:
暗号資産交換業者
Sygna Alliance対応の暗号資産
預入・送付可能
Sygna Alliance非対応:
暗号資産交換業者
預入・送付不可
非通知対象国                   –取り扱う全ての暗号資産
預入・送付可能
プライベートウォレット取り扱う全ての暗号資産
預入・送付可能

トラベルルールは、仮想通貨取引所で扱う仮想通貨自体にも影響される

先ほど、「トラベルルール」を制定するにあたって、用いられた情報通知システム「TRUST」と「Sygna Alliance」が存在し、両者間の送受信ができないことを記述しました。

ここで気をつけなければならないのは、上記の規定に加えて、暗号資産(仮想通貨)自体にもこのルールが適応されることです。

つまり、BTC(ビットコイン)やETH(イーサリアム)を送付する際にも、送金可能な取引所やプライベートウォレットであるか確認することが必要になります。

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「改正資金決済法」施行と「ステーブルコイン」について

2023年6月1日の「改正資金決済法」施行により、「ステーブルコイン」が適法に発行可能になりました。

ステーブルコインとは、ブロックチェーン技術を用いて作成された暗号資産(仮想通貨)のことです。

今回、改正資金決済法が施行されたことで、新たな「電子決済手段」として定義されました。

さらに、今まで法定通貨からステーブルコインのみ交換可能でしたが、ステーブルコインから法定通貨にも交換できるようになったのです。

ステーブルコインの国内発行に加え、電子決済手段として利用されることで、国内外の企業間決済における効率化が進むと大きな話題を呼んでいます。

現在見込まれている企業間決済市場は、1000兆円前後と予測されており、なんとその規模は、企業と個人間における取引市場の約3倍以上です。

グローバル市場における、ステーブルコインの代表例に、米ドルを裏付け資産とした「USDCoin(USDC)」や「テザー(USDT)」が挙げられ、既にご存知の方も多いのではないでしょうか。

こちらは、すでに「仮想通貨取引」や「NFT(Non-Fungible Token)」を購入する際の決済手段として利用されており、国際送金やネットショッピングでの決済手段としての利用拡大も見込まれています。

「NFT」とは

「NFT」とは、ブロックチェーンを基盤にして作成された、代替不可能なデジタルデータを指します。デジタル資産の希少性を担保できることで、話題を集めており、投資対象としても注目されています。

上記に加え、特定の地域での流通を目指したデジタル地域通貨としての運用も示唆されており、今後の大きな日本経済活性化に期待したいですね。

そもそもステーブルコインとは

先に述べた通り、ブロックチェーン技術を用いて作成された暗号資産(仮想通貨)をステーブルコインと呼びます。

大きな特徴は、円や米ドルなど「法定通貨」を裏付け資産とし、それに基づき価格の安定性を保つよう設計されている点です。

「法定通貨」とは

「法定通貨」とは、国家により認められた強制通用力を持つ通貨(法貨)のこと。日本の場合、日本銀行発行の「日本銀行券」と造幣局が製造する「硬貨」が当てはまります。

価格変動の度合い(ボラリティ)の高い一般的な暗号資産(BTCやETHなど)と異なるシステムであるのがお分かりいただけると思います。

ステーブルコインは、主に下記の4つのタイプに分類されます。

ステーブルコインのタイプ内容
法定通貨担保型法定通貨(円や米ドルなど)を裏付資とする
暗号資産担保型暗号資産(BTCやETHなど)を裏付資産とする
アルゴリズム型(無担保型)裏付け資産無し・ブロックチェーン上のアルゴリズムにより
価値が一定に保たれる
コモディティ型金や石油などの現物商品を裏付資産とする

ステーブルコインのメリット

1. 価値の暴落リスクが少ない《1コイン=1円と連動》

1点目は、現在広く利用されている仮想通貨(暗号資産)と異なり、法定通貨を裏付けしているため、価値の暴落リスクが低いことにあります。

2. 送金が速く、簡単

2点目は、銀行での送金と異なり、国内外問わずスピード感のある送金が可能になることです。重ねて、煩わしい手続きは必要なかったり、トラブルを防げることもメリットの一つではないでしょうか。

3. 送金コストが低い

3点目は、数十円〜数百円程度と、送金コストが安いことが挙げられます。

銀行と比べ、高額な送金手数料・為替手数料がかからないため、企業のコストカットにも繋がります。

4. パーミッションレス

4点目は、中央機関を介さず、個人間で取引が可能になる点にあります。

スマートコントラクトを使用した柔軟な契約形式やブロックチェーン特有の透明性のある仕組みが提供できます。

今回の法改正とステーブルコインの変革について

今回の「改正資金決済法」の変更点を解説するにあたり、まずは下記の図をご覧ください。

前提として、「現行法」ではステーブルコインに関して、下記のように規定・分類しています。

分類規律規定
★①デジタルマネー類似型デジタルマネー(送金・決済の手段)として規律法定通貨の価値と連動した価格(例: 1コイン= 1円)で発行され、発行価格と同額で償還を約する
②暗号資産型暗号資産や金融商品として規律上記以外(アルゴリズムで価値の安定を試みるもののこと)

今回の法改正に該当するステーブルコインは、法定通貨を裏付け資産とする、①デジタルマネー類似型を指します。

先にご紹介した通り、2023年6月1日より、正式な「電子決済手段」として定義されたものです。

日本国内で発行されるステーブルコインについて、裏付け資産を準備する責任は、発行者にあり、発行者は銀行・資金移動業者・信託会社などに限定されました。

発行者は、「銀行免許」または「資金移動業登録」=専用ライセンスの取得が義務付けられています。

海外発行の資産保全の責任者は、発行元ではなく流通業者です。

また、今回のステーブルコインを発行する権利=「特定信託受益権」のある発行者を「特定信託会社」と定義し、銀行免許未取得でも信託会社がでの取り扱いが可能となりました。

「特定信託受益権」とは

「特定信託受益権」とは、金融商品取引法と同等の販売・勧誘ルールが適用される、投資性の強い信託のこと。

①デジタルマネー類似型のステーブルコインには、仲介者を設けています。その名の通り、ステーブルコインの発行者と利用者の間に立ち、利用者の保護やマネーロンダリングなどのリスクの対応を行います。

もちろん、マネーロンダリングなどのリスクの対応は、発行者自ら行うことも可能です。

加えて、仲介者は、今回の改正資金決済法で新設された「電子決済手段等取引業」=専用ライセンスの登録が必須となりました。

また、発行者・仲介者ともに「トラベルルール」が適用されることになり、電子決済手段の移転を行う際には、利用者情報を移転先の電子決済手段等取引業者に通知する必要があります。

まとめ

いかがでしたか?

今回、6月1日から施行された「犯罪収益の移転防止に関する法律(略称:犯収法)」と「改正資金決済法」の変更内容とそれに伴い規約が設けられた「トラベルルール」や「ステーブルコイン」についてもご紹介しました。

時代のニーズに合わせて、法整備が成されたことで安心して利用者がサービスを活用できるだけでなく、国内外の企業の活性化が期待できるようになったのでなないでしょうか。

企業単位で意識を高めていくのはもちろん、個人間でも法律に触れることで、自分自身の知識や利益への一助となるだけでなく、何かトラブルに遭った際、自分の身を守ることに繋がります。

今後もXP Law Mediaでは、法律にまつわる情報をたくさんご紹介していきますので、是非チェックしてくださいね。

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